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チーズの作り手を訪ねて|湧水町・西ノ村ファーム

屋久島ヴィータキッチンで使わせていただいているモッツアレラチーズ。

その作り手である、鹿児島県湧水町の「西ノ村ファーム」さんを訪ねてきました。

自然に囲まれた牧場には、牛たちのほかにも犬や猫、ヤギが一緒に暮らしています。

今回は残念ながらチーズの製造日ではなく、牛たちも少し離れた場所で放牧中。

それでも、工房を案内していただきながら、ご主人から酪農やチーズ作りについて、たくさんのお話を伺うことができました。

千葉から鹿児島へ。自分たちの牧場を持つまで

ご主人は千葉県のご出身。

千葉で酪農の仕事を経験された後、自分たちの牧場を持ちたいという思いから、鹿児島へ移住されたそうです。

とはいえ、縁もゆかりも少ない土地で新しく酪農を始めるのは、簡単なことではありません。

まずは約3年半、酪農ヘルパーとして働きながら土地を探し、準備を重ね、ようやく自分たちの牧場をスタート。

それから約12年になるそうです。

お話を伺っていると、今の穏やかな牧場の風景にたどり着くまでには、ご夫婦のたくさんの努力があったことが伝わってきました。

始まりは、奥様の大好きなソフトクリーム

チーズ作りを始められたきっかけを伺うと、意外なお話が返ってきました。

もともと目指していたのは、チーズ工房ではなかったそうです。

奥様がソフトクリームを大好きで、いつか自分たちの牛乳を使ったお店を持てたら。

そんな思いが、現在のお店につながっています。

その後、ほかの酪農家が手がけるチーズに出会い、ご主人もチーズ作りに興味を持つようになったのだとか。

なかでもモッツアレラチーズは、思うような味になるまでに長い時間がかかったそうです。

地元のイタリア料理店の方が、毎週のように試作したチーズを受け取り、感想を伝えてくださったとのこと。

牛の世話をしながら、時間を作ってチーズを仕込み、試食してもらう。

それを何年も繰り返してきたというお話が、とても印象に残りました。

食べてくれる人がいること。
率直な感想を伝えてくれる人がいること。

ものづくりを続けるうえで、どれほど大きな力になることでしょう。

「完成」は、まだ先にあるのかもしれない

現在のモッツアレラについてお聞きすると、ご主人は今も試行錯誤を続けているとおっしゃいます。

モッツアレラは、温めたカード(乳を固めたもの)を練り、引き伸ばして作るチーズです。

その工程で時間をかけすぎると、せっかくのミルクの風味が抜けてしまうこともあるそうです。

少しずつ製法を変えながら、どうすればもっと牛乳本来の味を生かせるのか、今も考え続けていらっしゃいます。

そして、チーズの味を決めるのは製造技術だけではありません。

牛たちが何を食べ、どんな環境で暮らしているか。

その積み重ねが牛乳の味となり、チーズの味にもつながっていきます。

今でも十分美味しいと思って使わせていただいているチーズですが、ご主人のお話を聞いていると、これからさらにどんな味になっていくのか楽しみになりました。

牛の数よりも、牛たちが暮らす環境を

現在、牧場には約30頭の牛がいるそうです。

放牧中の牛たちは、夕方になると自分たちで牛舎へ戻ってくるのだとか。

また、牛乳の味は季節によっても変わるそうです。

暑い夏は牛たちの食欲が落ち、冬には乳脂肪分が高くなることもある。

その違いは、ソフトクリームを食べるお客様にも感じられるほどだそうです。

これからの牧場について伺うと、牛の頭数を少し減らし、その分、放牧できる土地を広げていきたいとお話しされていました。

牛たちがもっと広い場所で、自分たちで草を食べながら過ごせるように。

生産量を追い求めるだけではない、これからの牧場のあり方を考えていらっしゃることが、とても心に残りました。

お休みの日の、温かなおもてなし

この日はお店がお休みだったにもかかわらず、名物のソフトクリームをご用意してくださいました。

さっぱりとしていながら、ミルクの美味しさが感じられる、とても美味しいソフトクリームでした。

牧場で一緒に暮らす犬や猫、ヤギたちにも会うことができ、すっかり長居をしてしまいました。

実は私も以前、鹿児島市内でチーズ専門店を営んでいました。

そのお話をすると、ご主人も興味深く耳を傾けてくださり、チーズの製造方法などについても話が弾みました。

作り手と、さまざまなチーズを扱ってきた者。

それぞれの経験をお話しすることで、何か新しい発見につながれば、こんなにうれしいことはありません。

また訪ねたい場所

まだまだ伺いたいことがたくさんありましたが、残念ながら時間切れ。

「また改めて伺いますね」とお約束して、牧場を後にしました。

普段、厨房で何気なく手にしているチーズにも、そこに至るまでの長い時間と、作り手の思いがあります。

その背景を知ることで、食材への向き合い方も少し変わるような気がします。

西ノ村ファームのご夫妻、お休みのところ温かく迎えてくださり、本当にありがとうございました。

これからも大切に、ヴィータの料理に使わせていただきます。

そして次回は、ぜひチーズを作っているところも見せていただきたいと思っています。